EP1-07 魔界の七英雄

創作 第一章 大魔女試練編
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最高ランク : 8 , 更新: 2023/07/18 20:32:17

✸前回までのあらすじ✸
魔法を操る「魔術師」、「魔女」らが存在する魔界。そんな世界で、魔女の憧れの存在、「大魔女」になることを、「月の魔女」ダイアナは親友で「魔の魔女」シャロと共に志していた。そして、二人は魔界に忍び寄る「異変」の存在に感づいてもいたのだった。
ある日、半年に一度行われる「大魔女試練」と呼ばれる大魔女になるための試験が実施され、二人は最終試験を受ける段階にまで進む。だが、そこにはなぜかシャロの姿が無かった。
まずは最終試験を受けることにしたダイアナは、最初の出題者、大魔女ライノーの試練に挑む。




(厄介すぎる!)

試験が始まって約30分ほど経ったかしら、私はひたすら襲いかかってくる襲撃魔術を避け続け、余裕がある時には相殺してまだ耐えられていた。
けれど、ただ避ければいいものではないものばかり!地面に少しでも着いたら爆発するものや、急に瞬間移動するものもあるみたいで、それらはいまのところ、なんとか対処できてる。
上級魔術しか使っちゃいけないから、初級・中級魔術を使わないようにだけ注意して、なるべく魔力を消費しないものを駆使していく!

「このペースなら、耐えられそう…!」

「なかなかやるねぇダイアナちゃん!あ、この5発終わったらスピードアップするぞ〜」

「ス ピ ー ド ア ッ プ と か あ る ん で す か !!?」

目の前の5発を切り抜けると、確かに急にスピードが!ヒュンヒュンと風を切るような音を立てて、今まで以上の猛攻が襲ってくる!

「まぁ、今までのは肩慣らし?チュートリアル?ってやつだ!ダイアナちゃんなら凌げるだろう?」

「まだいけます…けど!きゃ、危ない!」

(これは流石に速すぎる!今まで通りにやっていたら最悪潰されてしまう!…これはあまり初手で使いたくなかったんだけど…)

「しょうがないわ。行きますよ!
『月魔術 白練り月(シルクムーン)』!」

 両手をばっと上げて、魔術を発動すると、私を囲うようにその「白練り月」は現れた。
これは月の魔女である私が最も得意とする「月魔術」の上級魔術の1つで、防御魔法として私が愛用しているものよ。全方位からの攻撃から私を守ってくれる。
比較的発動させるのは簡単で、大抵の攻撃魔術をしばらくガードしてくれる魔術。魔力が薄いヴェールのような形で私の周囲を守ってくれて、「月の如く硬い」と言われている。その姿はまるできめ細やかな絹のよう。
さらに私が使う全ての上級魔術は、卒業してからも鍛錬して魔術の精度・技術を改良したことで、私に最も合った使い方ができるわ。例えば、ガードだけではなく、「白練り月」が受けた魔術と同じ性質のものは、半径数百メートルのものを全て消滅してくれたり。
でも、魔力をかなり使ってしまう代物だから、やっぱり発動後の私の動きは鈍くなってしまうの。

「ふぅ…何分くらい耐えてくれるかしら。」

「いいね!前に見たときよりも精度が安定してるし、またなんか改良しただろ?流石だな!」

「…ありがとうございます。」

「魔女ん中じゃ、ダイアナちゃんが一番大魔女を熱心に志してるだろうし、魔術の上達スピードも大したもんだよ!こりゃあ、あの上二人を追い越す日も近いんじゃねぇか?」

「いえいえ、ルミカちゃんやグレシアさんに比べたら、私なんてまだまだですよ。それに、私を褒めるなら、この試験に合格してからにしてもらいたいものです。」

「アハー、それもそうだな!これに受からなきゃ、そもそも大魔女になる権利すら無くなっちまうもんだ!」

にんまりと口角をこれまで以上に上げたライノー様は、私の遥か上から私を見下ろすと、びしっと人差し指を突き出して叫ぶ。

「私はダイアナちゃんにはぜひとも、私らの仲間に入ってほしいと思ってんだ。この程度の試験、絶対に耐え切れよ!」

「言われなくても、始めからそのつもりですよ!」

_もう、あの日話を聞いた時から、ずっとずっと前から、ね。





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「はぁ…はぁっ…流石に……つがれましだ…」

「アハッ、おつかれさーーん!」

流石に体力がほぼ無くなってしまって、柄にもなく地面にへたれこんでしまった私の頭上を、ライノー様はけらけらと笑いながらふよふよーっと浮いている。
ひとまず、ライノー様の試練を無事に終えたわ。流石に疲れてしまって、私は現在進行形で息絶え絶えになりへたれこんでいた。

(結果的にやっぱり、とんでもない実技戦の試練だったわ。まぁ…思ってた以上に大変だった…そもそも魔力が少ないと上級魔術を使用できないし、三時間もライノー様の試験で耐え続けるなんてかなりハードだったのよ。先にお母様の試験を受けるべきだったかしら?)

魔力と共に体力が重要なのは、もうとっくに分かっていた。ライノー様のような肉体派の大魔女様だって多いし、そもそも体力が無くなってしまえば、魔力を十分に使うことが出来ない。
とはいえ、私は魔術のほうが断然得意だし、ライノー様の試験は普通の魔女だと瀕死レベルの代物だったので…ということ。

「ダイアナちゃん、余裕で合格〜!でもかなり息切れてるじゃないか、だいじょぶ?」

「だい…じょうぶ…です!」

流石大魔女試練、といったところかしら。まだ一人目なのに、ここまで体力が無くなるなんてね…

「おっ、流石だな!でも見てみな、ダイアナママが心配してここまで来たみたいだぞ!」

「えっ?」

「ちょっ、ライノーちゃん!」

声がした方をばっと振り向くと、私のすぐ近くにお母様が気配を消して、慌てた様子で佇んでいた。

(でも結界を張ってたのに……あぁ…試験が終わったのを確認して、結界破ってここまで来たってことね…)

「だ、ダイアナ、そんな目でみないでちょうだい?」

「アハー、そりゃあダイアナちゃんももういい年なのに、母親に試験場所まで来られたら呆れるだろ〜」

「ら、ライノーちゃんだって私と変わらないじゃないの…!娘のベスタちゃんに一日中べっとりくっついてるんでしょ!ベスタちゃんが鬱陶しそうにしてるの知ってるんだから!」

「むっ…!いやいや、それはお前もだろ!」

「あっ、いま認めたわね」

「……あのー、お二方…」

「「何!?」」

(どうして二人の大魔女様の子供っぽいケンカを黙って見てたんだろう私は。)

実はこの二人、お母様とライノー様は学生時代からの友人、同い年で、今でも仲良くしている仲なの。
今は大魔女同士で、互いに信頼しあっている仲。だから、私もライノー様とは何度も交流したことがあるわ。
そして、二人はかつて、魔界全土規模の災害を食い止めた「魔界の七英雄」同士でもある。
私の母、大魔女レトナと、ソリエル様、ライノー様、その他に大魔女ヴィレ・スケイラー様、グレシア・エリゴルさん、更に偉大なる「魔界創成神」へカティア様、そしてもうひとりは…名前や出生が不明の魔女。
彼女は今は魔界にすらいないし、「名前なんて広めなくてもいいから、いなかった存在にしておいて」と他の英雄達に伝えたそうなの。
けれどその後、それに反対したライノー様が名前だけ伏せて存在を記録して六英雄ではなく七英雄だとした。
これはどんな魔女学校の歴史の教科書にも載っている歴史的なこと。この魔界では、誰もが知っている事実よ。

(…英雄の娘だからって、良く周りの人達からは称えられたり尊敬されたりしてきたんだけど…実際に英雄なのはお母様達だし、私は当時の七英雄様たちの力には程遠いし…疎ましい、と言う程でもないけれど、子供の頃に「英雄の子」にはしゃいでた時を考えると、そこまで良いものでもないわね。)

結構長い間昔のことを思い返していたのに、まだお二方は口論をしている…楽しそうだし仲が良いのは良いことだけれど、試験中よ…

「あのー、次の試験…」

二人の間に入ろうとした、その時。

「やっほーライちゃん、レトちゃん!全っ然アナちゃんが来ないと思ってここに来てみたけど何してるんだい??」

「あっ、ソリエル様!」

噂をすれば、もうひとりの英雄ソリエル様がこちらまでいらっしゃった。
…にこにこしているけど、目が据わってるわ…

「ヤッホー、エル、久しぶり!レトと口喧嘩してた!」

「そうかそうか!つまりきみはそういう奴だったんだな!んでアナちゃんの試験どうなったっ!」

「きゃあーー、ソリエルちゃんが笑顔で怒ってる〜」

「いまあたしの試練に合格したところ!次がエルかなー、とか思ってお前を待ってたところだ!」

(え、そうなの?そして今のお母様のノリは一体何なの。)

「そうなんだ~、じゃ!ないよ!二人が喧嘩やめないとアナちゃんが試験受けられないでしょーが!」

「なんでだ?」

「アナちゃんは優しいの!だから二人が仲直りするまで待っててくれてたの!そうでしょアナちゃん!」

「え…あー…そうです、……多分。」

少し目を逸らしながら曖昧に答えることにしておいた。次どう動けば良いのか分からなかったから二人の指示を待っていただけなのだけれど…
それに、次はお母様の試験を受けるつもりだったのだけれど。

「あの、さっきにも言った通り、ソリエル様の試練は最後に受けようとしていたんですけれど…」

「うん、分かってるよ!でも、どうしても先に私の試験を受けてほしいんだ…」

「そ、そうなんですか。ソリエル様がそう言うなら、そうしましょうか…?」

「うん、お願い!ということで、私らは席を外すよ。ライちゃん、お疲れ!レトちゃん、追いかけてきちゃ駄目だよ!」

次の受験生を招くために屋敷の入口に向かって歩き出したライノー様は手をひらひらと振って、過保護ストーカー扱いされたお母様は少し不満げな顔をして、

「「またね(な)」」

と言ってくれたのを皮切りにして、私達は庭を飛び出し、外に向かって魔界の空を飛んだ。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「ごめんね!ほんとはレトちゃんの試験を先に受けたかったんだよね。でも、さっき会場で会ったときに言えばよかったんだけどね…」

再び堕の地区に戻った理由は、私の家がここからの方が近いというソリエル様の配慮と、今日はたまたまルミカちゃん…ソリエル様の娘さんが、この辺りに出かけているから、様子を見てから帰りたかったからだそう。

「いいえ、大丈夫ですよ。気にしないでください。」

「ならよかった!」

(ソリエル様の試験…見当がつかない訳では無いけれど、簡単に受かるものではないはず。一体、どんな試験なのかしら…)

「それじゃあ、早速発表するよ!私からの試練は〜」

緊張が走る。ソリエル様の瞳が、真っ直ぐと私を射抜いている。

_人間界へ行って、人間に魔術指導を二年間すること!


「人間界へ行って、指導をする。」

「魔術指導を。」

「人間に?」

「そう!頑張ってね!」

(え…)

えーーーーーーーっ!!?



次回 第八話「予想外」




















                                   
-----------------------------------Botsu scene①-----------------------------------------

「そういえば、お母様たちはお互いに呼び合ってる愛称が違うんですね」

「そうね、私は大体ちゃん付けで呼んでるけど、ライノーちゃんはレト、エル、ソリエルちゃんはプラスちゃん付け。」

「なんだか性格が出ているようでいいですね!3人ともわかりやすいです」

「でもねえ、二人とも私と出会ったばかりの頃は今と全然違ってたのよ?」

「そうなんですか?」

「そうよー、あんまり言ったら二人に刺されそうだから控えるけど、特にソリエルちゃんは今とは真逆だったものねー…」

「今と真逆のソリエル様って一体どんな感じなの…!?」

「ライノーちゃんは…性格自体はあんまり変わってない…?」

「それはなんだか想像できます…」

大魔女の母親を持ってよかった、と(他の大魔女の昔話を聞けるので)ダイアナは思うのであった。

ハノウ


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